Excel業務の効率化を進める上で欠かせないのが「マクロ(VBA)」の活用です。複雑な計算やデータ加工を一瞬で行えるため、多くの現場で利用されています。しかし、マクロだけでは「複数ファイルの連続処理」や「他システムとの連携」といった業務全体の自動化には限界があります。
そこで力を発揮するのがRPAツール「UiPath」です。UiPathはExcelアクティビティを使ってExcel操作を自動化できるだけでなく、既存のVBAマクロを直接呼び出して実行することも可能です。これにより「マクロの強み」と「UiPathの自動化力」を組み合わせたハイブリッドな業務効率化が実現できます。
この記事では、UiPathでExcelマクロを実行する具体的な方法から、実務での活用事例、注意点、さらに応用アイデアまで徹底解説していきます。
目次
- ✅ UiPathでExcelマクロを実行するメリット
- ・既存のマクロ資産を活用できる
- ・マクロとRPAの役割分担
- ・業務全体の自動化が可能に
- ✅ UiPathでExcelマクロを実行する方法
- ・方法1:Excelアプリケーションスコープ+マクロ実行アクティビティ
- ・方法2:Invoke VBAアクティビティ
- ・方法3:ショートカットキーによるマクロ起動
- ✅ UiPathからマクロを実行する具体的手順(サンプル)
- ・準備:Excelファイルにマクロを用意
- ・UiPath側の設定
- ✅ 実務での活用例
- ・売上レポートの自動化
- ・請求書の一括生成
- ・データクレンジング
- ✅ UiPath×VBAを組み合わせる際の注意点
- ・マクロのセキュリティ設定
- ・マクロ名の指定ミスに注意
- ・エラーハンドリングの実装
- ✅ 応用編:UiPath×VBAの高度な活用術
- ・引数を渡して動的に処理
- ・複数マクロの連続実行
- ・他システムとの連携
- ■ まとめ:UiPathとVBAを組み合わせて最強のExcel自動化を実現しよう
✅ UiPathでExcelマクロを実行するメリット
・既存のマクロ資産を活用できる
これまで作り込んできたExcelマクロをゼロから作り直す必要がありません。UiPathから呼び出すだけで既存のVBAをそのまま利用できます。
・マクロとRPAの役割分担
Excel内部の処理はマクロに任せ、ファイル操作やメール送信、Web連携など外部処理はUiPathに担当させることで、それぞれの強みを最大限に活かせます。
・業務全体の自動化が可能に
「マクロを実行 → 結果を別フォルダに保存 → Outlookで自動送信」という一連の流れをUiPathが統括し、完全無人化を実現できます。
参考:【UiPath】Excel業務を完全自動化する方法|初心者から実務活用まで解説
✅ UiPathでExcelマクロを実行する方法
・方法1:Excelアプリケーションスコープ+マクロ実行アクティビティ
UiPathには「Execute Macro(マクロを実行)」アクティビティが用意されています。これを使うのが最もシンプルな方法です。
- 「Excelアプリケーションスコープ」を配置
- 対象のExcelファイルを指定
- 「マクロを実行(Execute Macro)」を配置
- プロパティにマクロ名を入力(例:「Module1.TestMacro」)
- 実行すれば、指定マクロが呼び出される
・方法2:Invoke VBAアクティビティ
既存のVBAコードを直接呼び出す方法です。
- 「Invoke VBA」を配置
- VBAコードが書かれた
.vbs
または.txt
ファイルを指定 - 引数を渡して処理を実行可能
こちらはExcelファイルに保存されたマクロではなく、外部ファイル化されたVBAコードを呼び出す場合に有効です。
・方法3:ショートカットキーによるマクロ起動
どうしても「マクロ実行ボタン」やショートカット操作でしか動かない場合、UiPathの「Send Hotkey」アクティビティを使ってAlt+F8や設定済みのショートカットを送信する方法もあります。ただし堅牢性に欠けるため推奨度は低めです。
✅ UiPathからマクロを実行する具体的手順(サンプル)
・準備:Excelファイルにマクロを用意
例として、シート内の売上データを集計して別シートに出力する「集計マクロ」を用意します。
Sub 集計マクロ()
Sheets("売上データ").Range("A1").CurrentRegion.Copy
Sheets("集計結果").Range("A1").PasteSpecial xlPasteValues
MsgBox "集計完了"
End Sub
・UiPath側の設定
- Excelアプリケーションスコープを配置し、対象のExcelを指定
- 「Execute Macro」アクティビティを追加
- プロパティに
集計マクロ
と入力 - 実行するとマクロが動作し、結果が出力される
このように数ステップでUiPathとExcelマクロを連携させられます。
参考:【Excel】【成績処理】複数教科の合否判定をIF関数で自動化する方法(合格/再試験/不合格)
✅ 実務での活用例
・売上レポートの自動化
マクロで複雑な計算や書式設定を実施 → UiPathでレポートを保存 → Outlookで関係者に自動配信。
参考:【ChatGPT】Outlookメールを解析させるPower Automateフロー
・請求書の一括生成
マクロで請求書を生成 → UiPathでPDFに変換 → 各顧客ごとにメール送信。
・データクレンジング
マクロでExcelデータの重複削除やフォーマット統一 → UiPathで統合ファイルにまとめ、データベースへ自動登録。
✅ UiPath×VBAを組み合わせる際の注意点
・マクロのセキュリティ設定
Excelのマクロ実行には「マクロ有効化」の設定が必要です。組織ポリシーで制御されている場合は事前確認が必要です。
・マクロ名の指定ミスに注意
「Execute Macro」で指定するマクロ名は正確でなければ動作しません。モジュール名+マクロ名の形式を意識しましょう。
・エラーハンドリングの実装
マクロ実行中にエラーが出てもUiPathは待機し続ける場合があります。例外処理やタイムアウトを設けることで安定性を高められます。
参考:【VBA】エラーを無視して終了する方法:エラーハンドリング
✅ 応用編:UiPath×VBAの高度な活用術
・引数を渡して動的に処理
「Invoke VBA」を使えば、マクロに変数を渡すことが可能です。たとえば「指定した年月の売上データだけ集計する」といった処理をUiPathからコントロールできます。
・複数マクロの連続実行
一つのExcelに複数のマクロがある場合、UiPathで順番に呼び出すこともできます。処理の流れをUiPathが統括することで、複雑な業務も自動化可能です。
・他システムとの連携
マクロで整形したExcelデータをUiPathで基幹システムに入力したり、Webシステムに転記することで、業務フロー全体を自動化できます。
■ まとめ:UiPathとVBAを組み合わせて最強のExcel自動化を実現しよう
- UiPathは「Execute Macro」「Invoke VBA」でExcelマクロを直接実行可能
- 既存のVBA資産を活かせるため、ゼロから作り直す必要がない
- 実務ではレポート作成、請求書生成、データクレンジングに効果的
- 注意点はマクロのセキュリティ設定、マクロ名の指定、エラーハンドリング
- 応用編では引数付きマクロや複数マクロ連続処理も実現可能
UiPathとVBAを組み合わせれば、Excel業務の自動化は飛躍的に進化します。マクロで培った処理ロジックをそのまま活用しつつ、UiPathで全体フローを統括すれば、業務効率は数倍にも高まるでしょう。まずは小さなマクロ実行から始め、徐々に応用シナリオへと展開してみてください。