日々の業務でExcelを使う中で、「どのファイルに必要な情報があるのかわからない」「数百行のデータから特定の文字を探すのが大変」と感じたことはありませんか?
特に、複数のシートやファイルに情報が分散している場合、手動で中身を探すのは非効率です。
Excelには標準の検索機能が用意されていますが、さらに深く活用すれば、数千行に及ぶデータや複数ファイルの中身も一瞬で検索できます。
また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入することで、検索作業そのものを自動化し、毎日のルーチンをゼロにすることも可能です。
この記事では、「Excelの中身検索」をテーマに、手動・半自動・全自動の3段階で使いこなす方法を紹介します。
実務の効率化・検索漏れ防止・自動監査などに役立つ具体例も解説します。
目次
- ・なぜ“Excelの中身検索”が重要なのか
- ✅ 方法①:Excelの標準検索機能を使う
- ・基本操作
- ・便利な検索オプション
- ✅ 方法②:関数を使って中身を検索する
- ・部分一致を検出する関数
- ・完全一致で検索する
- ・検索結果を抽出して一覧化
- ✅ 方法③:マクロで中身検索ツールを自作する
- ・VBAによる検索ツールの基本構造
- ・ポイント
- ✅ 方法④:RPAでExcel中身検索を自動化する
- ・自動化の基本流れ
- ・UiPathでの活用例
- ・Power Automate Desktopの例
- ✅ 実務で役立つExcel中身検索の応用例
- ・顧客情報管理
- ・請求書・契約書の監査
- ・内部監査・セキュリティ対策
- ・品質管理・不具合分析
- ✅ 注意点と運用のコツ
- ✅ まとめ:Excelの中身検索を自動化し、探す時間をゼロにしよう
・なぜ“Excelの中身検索”が重要なのか
Excelファイルは便利ですが、情報量が多いと目的のデータを探すのに時間がかかります。
たとえば、以下のようなケースはよくあります。
- 数千行ある売上表から「特定の顧客名」を探したい
- 複数シートに同じキーワードが存在する
- 過去のExcel資料から「契約」や「見積」といった文言をまとめて確認したい
- 他部署が作成したExcelから必要な数値を探したい
こうした場合、手作業で開いて検索していたら、1日が終わってしまいます。
しかし、“中身検索の仕組み”を理解すれば、数分で目的の情報を抽出できます。
✅ 方法①:Excelの標準検索機能を使う
Excelに備わっている検索機能を正しく使えば、簡単に中身を確認できます。
まずは基本操作から押さえておきましょう。
・基本操作
- Ctrl + Fキーを押す
検索ボックスが開きます。 - 検索キーワードを入力
探したい文字や数値を入力します。 - オプション設定を開く
「オプション」をクリックして、検索範囲を「シート」または「ブック全体」に変更します。 - 「すべて検索」をクリック
該当するセルの一覧が表示され、クリックすると該当セルにジャンプできます。
・便利な検索オプション
| 設定項目 | 内容 |
|---|---|
| 検索対象 | 数式・値・コメントなどを指定可能 |
| 検索範囲 | シート単位 or ブック全体 |
| 大文字小文字の区別 | 英字検索時に精度を上げる |
| 完全一致検索 | 「セル内容が完全に一致する」場合のみ抽出 |
「数式」「コメント」「値」などを切り替えることで、目的に応じた検索が可能です。
ブック全体を指定すれば、複数シートにまたがる情報も一度に確認できます。
✅ 方法②:関数を使って中身を検索する
Excelの関数を使えば、「特定の語を含む行」や「セルの一部に含まれるキーワード」を自動で検出できます。
検索結果を表形式で整理したいときに便利です。
・部分一致を検出する関数
たとえば「商品」シート内で、A列に商品名、B列に価格があるとします。
A列に「りんご」という文字が含まれる行を抽出するには、次の関数を使います。
=IF(ISNUMBER(SEARCH("りんご",A2)),"ヒット","")
この式を下までコピーすれば、「りんご」を含む行に「ヒット」と表示されます。
これにより、どのセルが条件に一致したか一目でわかります。
・完全一致で検索する
完全一致を探したい場合は、SEARCHの代わりにEXACT関数を使います。
=IF(EXACT(A2,"りんご"),"一致","")
この方法は、英数字やコード番号など、完全一致が必要な場合に有効です。
・検索結果を抽出して一覧化
FILTER関数(Microsoft 365対応)を使うと、該当データだけを一覧に出力できます。
=FILTER(A2:B100,ISNUMBER(SEARCH("りんご",A2:A100)))
これで、「りんご」を含む行のみを自動抽出できます。
この関数を使えば、検索結果を即座にレポート化することも可能です。
参考:【RPA・自動化】PC内のExcelファイル、PDFファイル、マクロファイルだけのフォルダ検索方法
✅ 方法③:マクロで中身検索ツールを自作する
標準機能や関数では対応しきれないケース(複数シート横断、結果出力、自動処理など)は、マクロ(VBA)を使って検索ツールを作るのが最も効率的です。
・VBAによる検索ツールの基本構造
Sub SearchExcelContents()
Dim ws As Worksheet, resultWs As Worksheet
Dim c As Range, keyword As String
Dim rowCount As Long
keyword = Range("B2").Value
If keyword = "" Then
MsgBox "検索ワードを入力してください。", vbExclamation
Exit Sub
End If
On Error Resume Next
Set resultWs = Sheets("検索結果")
If resultWs Is Nothing Then
Set resultWs = Worksheets.Add
resultWs.Name = "検索結果"
End If
On Error GoTo 0
resultWs.Cells.Clear
resultWs.Range("A1:D1").Value = Array("シート名", "セル", "内容", "ブック名")
rowCount = 2
For Each ws In ThisWorkbook.Worksheets
If ws.Name <> "検索結果" Then
For Each c In ws.UsedRange
If InStr(1, c.Text, keyword) > 0 Then
resultWs.Cells(rowCount, 1).Value = ws.Name
resultWs.Cells(rowCount, 2).Value = c.Address
resultWs.Cells(rowCount, 3).Value = c.Text
resultWs.Cells(rowCount, 4).Value = ThisWorkbook.Name
rowCount = rowCount + 1
End If
Next c
End If
Next ws
MsgBox "検索完了。結果を『検索結果』シートに出力しました。"
End Sub
・ポイント
- B2セルに検索キーワードを入力
- 全シートを自動で横断
- 一致セルを一覧で出力
- クリックでジャンプも可能にできる
このような検索ツールを作れば、ブック内のすべての情報を対象に一括検索できます。
日常の確認作業を大幅に短縮できるでしょう。
参考:【VBA】文字列検索を部分一致で行う方法|Find・InStr・ループを使った実務サンプル
✅ 方法④:RPAでExcel中身検索を自動化する
マクロで単一ファイル内を検索できるようになったら、次はRPAを使って複数Excelファイルの中身検索を自動化する段階に進みます。
・自動化の基本流れ
- RPAで対象フォルダーを指定
例:C:\顧客資料 - Excelファイルを順に開く or 読み取る
RPAツールの「Excelアプリケーションスコープ」または「ワークブックを読む」を使用。 - キーワードを変数で設定
たとえば「契約」「見積」「未処理」など。 - 条件分岐で一致を確認
セルに該当文字が含まれていれば結果一覧に追加。 - ExcelまたはCSVに結果を出力
- メール・Teamsなどで自動通知
これにより、「どのファイルにどのキーワードが含まれるか」を自動で可視化できます。
参考:【UiPath】複数ファイルを一括処理する方法|Excel・CSV対応
・UiPathでの活用例
UiPathでは、「繰り返し(ファイル)」アクティビティを使ってフォルダー内のExcelを順に処理できます。
検索キーワードを変数にしてループ処理し、ヒットした行やファイルをリスト化するだけで、検索作業の自動化が実現します。
・Power Automate Desktopの例
Power Automate Desktopを使えば、プログラミング不要で以下のような自動化が可能です。
- 指定フォルダーのExcelをすべて走査
- 「指定キーワードを含むセルを抽出」
- 結果をまとめてメール送信
業務の定型タスクに組み込めば、**「毎朝自動検索して結果を報告」**といった運用も可能になります。
✅ 実務で役立つExcel中身検索の応用例
中身検索の仕組みは、単なる“探す”だけでなく、業務の安全性や精度を高めるツールにもなります。
・顧客情報管理
顧客リストが分散しているフォルダーから、「特定企業名」を含むExcelを検索し、全件を自動抽出。
営業・管理部門での情報共有を効率化。
・請求書・契約書の監査
「契約満了」「自動更新」「支払条件」などの語を含むファイルを検出して一覧化。
契約更新漏れのリスクを防止。
・内部監査・セキュリティ対策
「社外秘」「Confidential」「個人情報」などの語を自動で検索し、誤共有ファイルを特定。
RPAによる定期スキャンを行えば、情報漏えい対策にもなります。
・品質管理・不具合分析
Excelの報告書から「不具合」「再発」「改善」などの語を検索し、全社的な傾向を把握。
マクロやRPAで集計すれば、レポート自動生成も可能です。
✅ 注意点と運用のコツ
- 処理速度の最適化:
数千件を超える場合は、対象範囲やファイル数を絞る。 - 文字コードの統一:
異なるフォーマットのExcel(古い.xls形式など)はRPAでエラーになることがあるため、事前に変換しておく。 - パスワード保護ファイルはスキップ:
RPAで開く際に読み取り専用指定を追加すると安全。 - 結果ログを残す:
「検索日時」「対象フォルダー」「件数」をログに記録すると、再実行時の比較がしやすい。
✅ まとめ:Excelの中身検索を自動化し、探す時間をゼロにしよう
- Excelの中身検索は、「Ctrl+F」→「関数」→「マクロ」→「RPA」と段階的に効率化できる。
- 複数ファイルを対象にするなら、Power AutomateやUiPathで自動化が最適。
- 業務に合わせて仕組みを組み込むことで、検索・報告・監査まで自動実行が可能。
- 情報の検索精度が上がることで、見落としやヒューマンエラーも削減できる。
日々のExcel業務で時間を取られがちな“探す作業”は、ツール化・自動化することで生産性を劇的に高められます。